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2006年9月14日(木) アングラ化する日本に来るタイ女性

 以前から、不法入国でタイから日本に渡り(trafficking)、不当な労働条件で売春をさせられているタイ女性が問題になっていましたが、最近その傾向が変わってきているようです。

 8月13日のNation(タイの英字新聞)に、東京でこういった女性たちを保護する施設HELPのコメントが紹介されています。HELPによれば、「1991年には270人のタイ女性を保護したが、タイ人の数は次第に減ってきており、2005年には10人以下に、そして今年はまだひとりもHELPに助けを求めてきたタイ女性はいない」、ということです。

 しかしながら、数字だけを見て手放しに喜ぶわけにはいきません。タイ人権委員会(National Human Rights Commission of Thailand)のメンバーNaiyana Supa-pung氏は言います。

 「HELPにかけこむタイ女性の数が減ったことは、だまされて日本に渡ったタイ人が減ったことを意味するわけではない」

 日本に連れてこられたタイ女性は不当な借金を背負わされて働くことになります。10年ほど前は、その額がおよそ300万円だったのが、現在ではその倍の600万円になっているそうです。

 こういった女性を擁護する日本の団体Network Against Trafficking In Persons (JNATIP)の幹部は言います。

 「タイが通貨危機に直面してから、以前には見られなかった高い教育を受けている女性も、タイ国内で仕事がないため売春目的で日本に来るようになっている」

 2004年に日本が不法入国に対する法律を制定してから、世間ではこういった売春目的で入国する女性は減ってきていると思われているようですが、実際は異なるようです。

 JNATIPによれば、「最近は、数年間売春婦として各地で働かされた後、日本人男性と強制的に結婚させられるケースが増えており、こういった男性は失業者か違法行為をしている者であり、彼女らは家庭内暴力を受けていることが多い」、そうです。

 また、不法入国したタイ女性が出産した場合、その子供の国籍や権利が問題になることも多いという実情があります。

 タイでは最近、こういった女性を保護する公的な機関が1億バーツ(約3億円)の予算でつくられました。これまで8人の女性がこの機関によって補償を受けることができたようです。

(谷口 恭)