HIV/AIDS関連情報
2006年8月10日(木) リビアのHIV院内感染、真実の行方は・・・
リビアのトリポリタニアで起こった426人の子供へのHIV院内感染が、政治的な背景と相まって複雑な展開を見せています。
もともとこの事件は、トリポリタニアのBenghazi病院で、426人もの子供がHIVに感染したのは、パレスチナ人の医師とブルガリア人の5人の看護師の計6人が、故意にHIVを子供たちに感染させたからだとして、裁判がおこなわれたことから始まります。
この6人の被告は、一審で銃殺の判決が言い渡され、1999年から投獄されています。この判決の証拠になったのは、リビアの5人のHIVの専門家が作成した報告書で、このなかで、被告の6人が故意にHIVを子供たちに感染させたことが述べられています。
ところが、2005年12月に最高裁はこの有罪判決をくつがえしました。
8月8日のロイター通信によりますと、この6人は、暴行や拷問を受け、虚偽の告白をさせられ、実際は無実であることを主張しています。被告の弁護人は、「HIV感染は病院の過失によるものであり、リビアの専門家の主張は誤りである」、と述べているそうです。
感染した子供のうちおよそ50人はすでにAIDSで死亡しており、家族の代弁者は、「リビアの専門家の作成したレポートは科学的であり確固としたものだ。(だから6人の被告は有罪である)」、と述べているそうです。
リビア側はこの6人の有罪判決を支持しており、ブルガリア政府に対し、55億ドルの補償金を支払えば5人の看護師を釈放することを提案していますが、ブルガリア政府はこれを拒否しています。しかし、US、EU、リビアと共にエイズ基金を設立することには賛同しているそうです。
最高裁はいったん休廷となり、再審は8月29日におこなわれる予定です。
この事件が複雑なのは、リビアと西側諸国との政治的な問題があるからです。ブルガリアとEUは6人の被告の無罪を主張しており、USもこれに賛同しています。そしてブルガリアは補償金の支払いを拒否しています。「リビアとしては西側諸国の主張を全面的に認めるわけにはいかないが、エイズ基金の設立を受け入れて6人を釈放すれば面子が保てるのではないか」、と見る専門家もいるようです。
リビアは長年の間USと敵対していましたが、現在国交回復がおこなわれようとしているところです。この事件が国交回復の障害になる可能性が指摘されています。
しかしながら、医療事故の真実は政治的背景に左右されるものであってはいけません。私自身は一医師として、最高裁が公正な判決を下してくれることを切に願います。
(谷口 恭)
もともとこの事件は、トリポリタニアのBenghazi病院で、426人もの子供がHIVに感染したのは、パレスチナ人の医師とブルガリア人の5人の看護師の計6人が、故意にHIVを子供たちに感染させたからだとして、裁判がおこなわれたことから始まります。
この6人の被告は、一審で銃殺の判決が言い渡され、1999年から投獄されています。この判決の証拠になったのは、リビアの5人のHIVの専門家が作成した報告書で、このなかで、被告の6人が故意にHIVを子供たちに感染させたことが述べられています。
ところが、2005年12月に最高裁はこの有罪判決をくつがえしました。
8月8日のロイター通信によりますと、この6人は、暴行や拷問を受け、虚偽の告白をさせられ、実際は無実であることを主張しています。被告の弁護人は、「HIV感染は病院の過失によるものであり、リビアの専門家の主張は誤りである」、と述べているそうです。
感染した子供のうちおよそ50人はすでにAIDSで死亡しており、家族の代弁者は、「リビアの専門家の作成したレポートは科学的であり確固としたものだ。(だから6人の被告は有罪である)」、と述べているそうです。
リビア側はこの6人の有罪判決を支持しており、ブルガリア政府に対し、55億ドルの補償金を支払えば5人の看護師を釈放することを提案していますが、ブルガリア政府はこれを拒否しています。しかし、US、EU、リビアと共にエイズ基金を設立することには賛同しているそうです。
最高裁はいったん休廷となり、再審は8月29日におこなわれる予定です。
この事件が複雑なのは、リビアと西側諸国との政治的な問題があるからです。ブルガリアとEUは6人の被告の無罪を主張しており、USもこれに賛同しています。そしてブルガリアは補償金の支払いを拒否しています。「リビアとしては西側諸国の主張を全面的に認めるわけにはいかないが、エイズ基金の設立を受け入れて6人を釈放すれば面子が保てるのではないか」、と見る専門家もいるようです。
リビアは長年の間USと敵対していましたが、現在国交回復がおこなわれようとしているところです。この事件が国交回復の障害になる可能性が指摘されています。
しかしながら、医療事故の真実は政治的背景に左右されるものであってはいけません。私自身は一医師として、最高裁が公正な判決を下してくれることを切に願います。
(谷口 恭)