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2006年10月17日(火) バンコクのゲイ専用パブが警察の手入れ

 私は臨床の現場でゲイの人と話をして、「職場で差別を受けている」「カミングアウトできない」などと言う言葉を聞くと、「タイに行ってみればどうですか」と言うことがしばしばあります。このウェブサイトでも何度か述べたように、タイでは、同性愛者に対する差別やスティグマというものがほとんどなく、実際タイには世界中からゲイが集まってきているからです。

 しかし、バンコクのゲイに関する情報のなかには嫌悪すべきものもあります。10月16日のバンコク週報で取り上げられたニュースはその典型的なものです。

 10月11日の深夜、ラチャダピセク通りにあるゲイの間で有名なパブに警察の手入れが入ったそうです。このパブは無許可の上、時間外営業を行っていたといいます。警察の調べで、トイレの横に位置した小さな隠し部屋が発覚し、そのなかには使用済みのコンドーム4個が散乱していたそうです。

 さらに警察は客と従業員を拘束し、全員の尿検査を実施したところ、10人に覚醒剤の陽性反応が出たそうです。18歳未満の少年も15人含まれていたといいます。

 このような事件が起これば、世間のゲイに対する目が厳しいものになってしまいます。非難されるべき行為は、不特定多数との性行為や違法薬物の摂取、未成年者の飲酒などであるべきで、同性愛行為自体は責められるべきものではありません。しかし、このような事件が世間で注目されると、同性愛者への目が冷たいものになりかねません。

 もちろん、ゲイの多くはこのような違法行為をおこなっていません。そればかりか、タイの政治や経済を担っている者のなかにもゲイは少なくありません。実際、タイの有名大学の文科系学部の学生の少なくとも7割はゲイだそうです。しかし、なぜか理系学部ではゲイの比率が下がるそうです。そして、興味深いことに、大学の偏差値が下がるにつれてゲイの比率も少なくなるといいます。(これはタイの国立有名大学を卒業している女性から直接聞いた話です) 

 もうひとつ、最近友人(女性)から聞いた興味深い話をご紹介したいと思います。彼女はある外資系の航空会社のフライトアテンダントをしているのですが、彼女の航空会社の男性のフライトアテンダントの9割はゲイだそうです。このような環境では、冒頭で紹介した私が日本のゲイから聞いた言葉、「職場で差別を受けている」「カミングアウトできない」などということはあり得ないわけです。

 別のところでも述べましたが、ゲイであることがスティグマの対象になるべき理由などどこにもありません。不特定多数との性行為や違法薬物は許される行為ではありませんが、「許されるべきでない行為」と「ゲイであること」はきちんと区別しなければ事の本質を見誤ることになってしまいます。

(谷口 恭)